ツーリング用バイクウェアに求める要件 (選び方)

2 年前に普通二輪と大型二輪の免許を取った。正直、どんなプロテクターとバイクウェアがベストなのか、いろいろウェブで調べても最初はよくわからなかったし、これから雪が解けて 3 シーズン目が始まる今でもまだ試行錯誤中だ。ただ、こういう (40 歳をだいぶ前に過ぎた、大人の) バイク初心者がどういう考えをしながら、どういう風にプロテクターとバイクウェアを選んでいったか、という経験談やポイントを、最初の頃いろいろ読めればよかったのにと思っていたので、自分で書いてみることにする。

私は当初、林道を走ってみたいと思って普通二輪免許を取得し、ヤマハ・セロー 250 を購入したが、思いのほか初心者にとって林道走行は難しいことがわかり、また舗装路の遠出が予想外に気持ち良いと気づいたので、一日がかり、あるいは泊りがけのツーリングがバイク利用の中心になっている。その後、大型免許を取得し、スポーツ・ツアラーに分類される排気量 900cc のヤマハ Tracer9 GT を増車した。そのためここで説明するバイクウェア選びもツーリングが前提になっている。日常の足としてバイクを利用する場合は、ウェアの選び方も変わってくると思う。また、ハーレーダビッドソンのような、スタイル (服装の見た目) が重要なバイクも対象としていない。どちらかというと、バイクウェアの持つ機能面に注目して説明する。あらかじめご理解いただいた上で、読み進めてもらえたら幸いである。

さて、実際バイクウェア選びを振り返ってみることで、バイクウェアにどのような要素が必要なのか整理できたので、まずはそれから書いていきたいと思う。

ウェア要件 1: プロテクター

通っていた自動車学校では、コミネ製の外付け胸・背中・肩、肘、膝・すねのプロテクターを貸してくれて、装着することが教習や検定を受ける上で必須だった。教習中にケガをするようなことはなかったが、免許取得後も同等のプロテクターをすることは自分にとって必要だろうと考えた。実際、普通二輪を取得したその日のうちに、納車されたヤマハ・セローの発進時トルクが教習車より弱いということを理解する前に、クラッチミートした際エンストし、停止状態で転倒したが、ちょうどその時胸のプロテクターを着けていたため、大事には至らなかった (とはいえ、ひと月くらい肋骨が痛くて、そちら側を下にして眠れなかったのだが)。

四輪自動車には衝突時の衝撃吸収性 (クラッシャブルゾーン) があり、人間が乗り込む部分は変形しにくいフレームで硬く守られている。つまり、外骨格を備えた乗り物である。それに比べるとバイクは生身をさらして走る乗り物だ。ちょっとしたミスが転倒につながるし、自分がどんなに注意していても、もらい事故は起き得る。そう考えると、プロテクターの装備は欠かせない。プロテクターにもレベルがあるようだが、同じ CE 規格でもレベル 2 のほうが衝撃吸収能力が高い。

一方、教習所で使うような外付けのプロテクターは「いかにも」な見た目になってしまうという問題がある。ツーリングに出かけても、そういった見た目でバイクに乗っている人を見かけたことはない。プロテクターを内蔵したバイクウェアか、服の下に付けて目立たないインナータイプのプロテクターか、どちらかがほぼ必須である。

ウェア要件 2: 防水性

オープンカーを除く四輪車には、屋根が付いていて、雨がしのげる。バイクには当然ながら屋根はない。近所を走る程度であれば、天気予報をよく確認しておき、雨の降りそうな日は乗らない、という選択肢もとれる。一方で、泊りがけの長距離ツーリングなどでは、行った先で天気を選ぶことはできない。最初から雨のことを考慮しておく必要がある。

自分の足で山道を歩くハイキングでは、雨が降ってきた時にバックパックを降ろし、上からゴアテックスなどの防水透湿素材のレインジャケット、レインパンツを着ることになる。当初、バイクでもそういった対処をすれば良いと思ってレインウェアを持参していたが、バイクの場合、雨が降るたびにバイクを安全に停められる場所を探して停め、パンツに至ってはブーツをいったん脱ぐか、ブーツを履いたままレインパンツを履く必要がある。これは実際にやってみると、かなりわずらわしい作業である。また、降ったりやんだりもコロコロ変わることが多く、すぐ雨がやむだろうと思いながら走っていると思いのほか短時間でびちょ濡れになることもあるし、レインウェアに着替えたのにすぐやんでしまった、ということも起こる。

ツーリングをしていると、雨が降ってきても気にしないで走っている人がかなりいる。そういう様子を目にしてからあらためてバイクウェアを調べてみると、バイクウェア自体に防水性を持たせているものもけっこうあるとわかった。防水性はすなわち通気性がないということなので、暑い季節に手放しで着ていられるものではないが、最初から防水性を持つバイクウェアを用意しておいた方が、上記のような着たり脱いだりの手間は省ける。

ウェア要件 3: 温度調節

現代の四輪車には、ほぼすべてエアコンが装備されている。一方でバイクにはエアコンはない。暑さ寒さは、バイクウェアで制御する必要がある。そして、暑すぎる場合も寒すぎる場合も、乗り手の集中力と体力を削ぎ、結果的に安全性を左右する場合がある。

十分に寒い時期はしっかり着込むしかないので、あまり迷いがない。また、通風性も必要ないので、防水素材のものを着ることにも抵抗がない。

問題は暑くなったり、寒くなったりする時期だ。日常生活では服の脱ぎ着で対応することになると思うが、防水性のところで説明したようにバイクを停めて着替える手間が発生してしまう。これに対応するため、一部のバイクウェアは、ベンチレーション機構を持っている。これは、ジッパーやベルクロテープなどを使い、開閉できる部分を用意することで、外気をウェアの中に取り込む/取り込まないをコントロールできる構造である。これがあると、ウェアの見た目が「いかにもバイクウェア」になってしまうという欠点はあるが、利便性、快適性は高い。長距離ツーリングが中心であれば、ウェア選択の重要なポイントになってくる。

ウェア要件 4: バタつきを防ぐ

最初の頃、インナータイプのプロテクターを使って、上着はふだん使いの薄手のパーカーを着る、というようなことをしていた。正直に言うと「いかにもバイクに乗っています」という格好をしたくなかったからだ。ただ、これをすると思っていた以上に、風にあおられて服がバタつく。ずーっとバタバタバタバタ音を立てているので、わずらわしいし、服も傷んでしまう可能性がある。バイクは、風を切って走ることが醍醐味の乗り物なので、長距離ツーリングでは風にあたってもバタつかない、専用のウェアを着たほうがいいということが経験的にわかった。

バイクウエアは、素材やデザイン自体がばたつきにくいものになっている上、袖の入り口や途中、ジャケットの裾などを細く絞って固定する仕組みを持っている。一度そういったウェアに慣れてしまうと、もうふだん着で遠出はしたくなくなってしまう。

これらの要件を満たしたものは?

こういったバイクウェアに求める要件、ポイントは、バイクに 2 年近く乗ってきて、振り返ってみて初めて明確にできたものである。実際はいきあたりばったりで、その時その時で「これがベストかな?」と思いながらウェアやプロテクターを買ってみて、それを着てはバイクに乗ってみて、結果的に無駄な買い物をしながら気づき、理解してきたものだ。次の記事では、その結果こういうものが良さそうだ、とわかったものを紹介したい。