函館に引っ越すことになった経緯

(これは以前、Facebook に友達限定で公開した文章をもとに、一部修正したものです)

ある年 の 7 月にじっくりひとりで考えごとをしたいと思って 1 週間、函館に宿をとった。函館は 2 歳から 7 歳まで過ごした場所だし、祖父母が住んでいたので、神奈川に引越してきてからも何度となく行った。というか、祖父母が亡くなった後も何故だかまた行こうと何度も何度も思う場所だった。

実際は直前に急ぎの仕事を引き受けてしまったので、毎日午前中にリモートミーティングをしていて、静かに考えごとをするような雰囲気にはならなかったんだけど、それでも日暮れ前にはジョギングして、その後宿の屋上にある函館空港が見える温泉につかるというゆったりした日々を過ごした。

宿は湯の川にあったので、走る時は漁火通という海岸沿いの道を函館駅函館山の方向に行って、適当なところで引き返してくるというコースをとった。子どものころ、家から函館駅近くのデパートまで行く時に、バスで何度も通った見知った道だ。いつものように、最初は短めにして、だんだん回を重ねるにしたがって距離を伸ばしていった。

途中、海側の一度も入ったことない細い路地に進むと、海岸に面した土地に「売物件」という看板が立っていた。すごい気持ちのいい場所なので、持っていた iPhone で写真を撮り、看板も拡大する形で別途撮った。

当時、知人と起業した、まったく売上の立たない会社を精算したばかりで、それまで受託の仕事も最低限に絞り、生活を切り詰め、貯金の残高はジリジリと減っていくという状況だった。いつかこんなところに住めればいいなとは思うけど、まぁフリーランスだし、お金が貯まったらだな、と思うことにした。

ただ、函館に住みたいという気持ちは変わらなかったので、その翌年の夏に妻と子といっしょに賃貸物件を探しに行った。海の見える物件もあるにはあるんだけど、どうも「ここだ」という気がしない。そんな中、妻をそのジョギングの途中で見つけた土地まで連れて行った。「まぁ売り土地なんで今は無理なんだけどね」とか言いながら。

そうしたら「こんな気持ちいい場所なら、とにかく申し込むべきじゃない?」とのこと。たしかに。ローンが降りるかどうかなんて気にしないで、ここに住みたいならとにかく申し込んでみればいいのか、と思い、土地を買う、家を建てるということがどういうことかもまったくわからないまま、看板に出ていた番号に電話をかけてみた。

すると「あの土地は現在商談中です」とのこと。。。夢はあえなく消えた。

もやもやしたまま、賃貸で住みたいと思いきれる物件も見つからないまま、神奈川に帰ってくることに。 その後夫婦で毎週のように函館の海の見える物件を探す日々。その土地がウェブ上で「商談中」表示のままなのも変わらず。

さらにその翌年の 2 月くらい、春には子どもも小学校に上がるというタイミングなので、その前に引越してしまおうかという気分になり、また物件を見に行くか、という話を妻とする。その中で「ダメ元で、あの土地に関して電話してみれば」とのこと。まぁたしかに。電話をしてみると「実はその商談はなくなってしまったので」と。あれ、表示は「商談中」のままだけど。。。

急ぎ申し込みの方法を教えてもらい、そしてトントン拍子でローンも降り、地鎮祭を済ませてきたところでこの文章を書いている。

…というような経緯で、函館に引っ越すことになった。